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「職業奉仕」心の庭師 山下力人

2021.01.21 木曜日

職業奉仕について
『心の庭師 山下力人』

本日は貴重なお時間をいただきありがとうございます。株式会社山下グリーン 山下力人です。

私は25年間造園業に携わってきました。
小学校の頃に見た半纏姿の庭師さんに憧れ、いつか自分もカッコいい庭師さんになりたいという夢がありました。


高校に入るとすぐに夏休みや冬休みなどの長期の休みを利用して造園会社でアルバイトをさせていただき、卒業と同時にその造園会社に就職しました。

 

実際にその業界で働いてみると、半纏を着て庭木の剪定をしてお客様に喜んでいただく、感動してもらえるような、子供の頃に思い描いていた庭師の仕事はとても少なく、
街路樹や公園の樹木の剪定などの公共事業がメインの仕事でした。

発注者からは「苦情が出ないように切ってくれ」とか「枯れてもいいから短く切ってくれ」と言った当時の私からは信じられないようなネガティブな指示がありました。
会社の先輩職人さんたちの仕事に対するスタンスも
「見えないところは手を抜いてもいい」「検査に通れば品質は低くてもいい」といった、とても残念なものでした。
例えば剪定した枝の切り口には殺菌剤を塗るのですが、検査官が下から見て見える箇所だけ薬を塗って、見えないような上のほうの切り口には薬を塗らないとか、そんなスタンスでした。

憧れていた庭師になってみたものの、自分が想像していた憧れからは程遠い世界を目の当たりにして、とてもがっかりしました。

それなら自分で理想の会社をつくろうと思い、2008年に「庭師を子供たちが憧れる職業No.1にする」という大きな理念を掲げて会社を立ち上げました。もう少しで14年目となります。

当社では植木の殺処分を減らす取り組みに力を入れています。殺処分と言うと猫や犬などの動物を思い浮かべる方が多いと思いますが、植木も実家の売却や遺品整理、引越しなどの理由から、やむを得ず伐採することになってしまうことがあります。そこで新たに育てていってくださる里親さんを見つける活動を行っています。

この活動のきっかけは2012年です。
当時は庭木の手入や伐採作業を主に請け負っておりました。


ある日伐採作業を請け負い、いつものように仕事を進めようとすると、年配の女性のお客様がとても悲しそうな顔で植木を眺めていました。
気になったので、「思い入れのある植木なんですか?」と聴いてみると、
「亡くなった主人が大切に育てていた植木で、本当は伐採したくないんです…」と涙を流されました。その話を聴いてしまったので、伐採することが申し訳なくなり、「じゃあ、僕が育てます」と伝え、会社の資材置き場に持ち帰ることにしました。

 

それ以来、伐採の作業の前には、植木に対する想いをヒアリングするようにしたところ、多くのお客様が本当は伐採したくないと思っていることを知り、「植木の里親」活動をスタートさせました。

活動を続けていく中で、様々なドラマに出逢い、植木の命が愛され引き継がれていくことの意味も深く感じるようになりました。

 

昨年の活動経験を2つご紹介いたします。
昨年の8月に50代の女性から「植木を引き取ってほしい」と、ご依頼の電話がありました。
横浜のお宅に伺い、どうして植木たちを引き取ってほしいのか理由を尋ねたところ、
その方は持病があり、その病状が思わしくなく、やむなく実家に帰り本格的に治療に専念するとのことで、今の家にいる猫2匹と、大切にしていた植木たちは育てることができなくなったとのことでした。その場で思い入れのある大きな7つの植木をトラックに積み込み、お引き取りました。

その後「植木たちがどうなるのか」とても心配されていたので、すぐにでも安心してもらいたいと思い、植木達を引き取ってくれるところをいろいろと探したところ、山梨県のほうですべてを快く引き受けてくださる方が見つかり、そちらのお庭に植木たちを植栽することができました。

女性には、植栽の様子などをラインの写真でリアルタイムにお送りして、とても喜んでもらえました。そして私たちからの提案で9月には女性をお連れして山梨県まで行き、新たな里親さんのお宅へ訪問して植木たちと再会を果たすこともできました。

この話は『庭じまい』として読売新聞に掲載され、また昨年12月に『「シングルライフ」編集長は独身.ひとり暮らしのページをつくっています』というこちらの本にも紹介されました。

女性は自分が生きた証が本に残ったと、とても喜んでくれています。
今は病状も安定して、女性は治療日の情報などを私たちに教えてくれます。
そのたびにこちらからは植物の写真などを送り、ラインを通じて励ましています。
ちなみに2匹の猫も新たな里親さんの元に引き取られて行きました。

 

もう一つ思い出深い仕事は、難病ALSを患っている50代女性のお客様のお話しです。

このお客様は元気だったころはガーデニングが大好きで、お休みの日にはいつも庭いじりをしていたとのことでした。病気になり身体が動かなくなってからは庭に出ることもできず、ご家族は庭いじりは苦手なようで、荒れ果てていく庭を想像しては悲しみに暮れていたようです。
工事が完成しても維持管理ができないのであれば、また庭が荒れ果ててしまうと思い、今後、庭を管理していくご主人にどの程度の管理なら負担にならないかを細かくヒアリングしました。
そして奥様のご要望も取り入れ、簡単に維持管理ができる、「ご夫婦の理想のデザイン」を提案させていただきました。これは「引き継がれる庭」への挑戦です。

依頼者の奥様は工事中の庭を眺めることも難しい状態だったので、喜んでもらうために何かできないかと考え、徐々に綺麗に仕上がっていく庭の様子を毎日奥様のパソコンにラインで送り続けました。奥様は眼球の動きでパソコンは使えるので、毎日返事をかえしてくれました。

以前はとても綺麗なお庭だったことや、自分で植えたアマリリスの開花を見るのが大好きだったことなどを話してくれました。工事完成後、綺麗になった庭は、ご家族でも簡単にメンテナンスができる形となりとても満足して頂いています。

そして奥様には目の届く室内に「マジックアマリリス」をプレゼントしました。
このアマリリスは球根のまま水をあげないでも開花する特殊なアマリリスで、全く管理がいりません。写真ではなく実際に開花が見られると、とても喜んでもらえました。

こちらのお客様は、先にお話しした「植木の里親」事業をやっていると知って、そのような業者さんなら是非お願いしたいと、自宅の造園工事を依頼していただきました。
そして工事の形は「サスティナブルガーデン」「引き継がれる庭」として当社の新規事業としてスタートしました。

お客様に喜んでいただきたいという想いから新たな事業が生まれる経験を2度もさせていただき、更に、関わる人に喜んでいただくことは、いずれ自分たちのもとに何倍にもなって帰ってくるという貴重な経験を仕事を通してさせていただだいています。

 

職業人として、自分たちが持っているスキルを向上させながら、関わる人を最大限に喜んでいただくことを追求するということが、私が目指す、カッコいい庭師の姿です。

これからも「子供が憧れる職業No.1」を目指して頑張っていきます。

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